ネガティブによるネガティブのためのエッセイ「ナナメの夕暮れ」レビュー!

はじめに

この本は最初から最後までネガティブ向けの本なので、細かいことを気にしたり、引きずったりしないポジティブな方向けの本ではないです。「自分はポジティブだ!」と自負している方は、そっと「戻る」をクリックすることを推奨します。

 

概要

「ナナメの夕暮れ」はお笑いコンビ、オードリーのツッコミの若林氏が雑誌「ダ・ヴィンチ」で連載していたエッセイ(2015.8 ~ 2018.4)と、この本のために書き加えられたものとの2部構成となっています。

 

著書「表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬」が斎藤茂太賞を受賞したこともあり、その文才は広く認められています。

 

感想

まずは全体の感想を、

世の中にはネガティブという人種があって、常に劣等感を抱き、ナナメの視点から物事を眺め、些細なことをズルズルと引きずって自分自身を苦しめてしまう。著者の若林氏や、こんなことを書いている僕自身もこちら側の人間である。対照的にただただ毎日を楽しんでいきている、生きることができるポジティブという人種も存在する。もちろん、そのように振る舞っているだけで、根がネガティブである場合もあるが。著者の相方、オードリー春日氏は典型例だろう。自意識や自己顕示欲が強いがゆえの自己否定、これが自らをより苦しめるものだと分かっていながらもやめられない。更には「他人に認められるために他人の正解を探して自分を見失う。」それはとてももったいないことで、少しずつ自分の好きな部分を見つける、すなわち自分の肯定できる部分を見つける。このことは他人を肯定する、すなわち世界を肯定する第一歩になる。「ネガティブはあり余る体力である。」そのあり余る体力をぶつける方向を少し変えるだけで、見える世界は全く異なる視点から描かれているはずである。著者の経験と論理的な追求によるこのひとつの「答え」には多くのネガティブが共感できるのではないだろうか。

 

ネットの普及によってネガティブ、特に人見知りにとっては逃げ場が多くなっていて、若い間に無理やり矯正する必要性が薄れているのかもしれません。ネットの意見や正論に同調すれば簡単に自分を(表面的に)肯定することができるでしょう。

 

もちろんこれは根本的な解決には一切なっていなくて、ただただ他人の操り人形になっていることに気づいていないだけなのかもしれません。しっかりとした自分のブレない意見、すなわち軸を持つことが「肯定できる自分」を保持する単純かつ明快な方法なのかもしれないですね。

 

 オードリーのANNで語られた話題についても多く取り上げられていて、それらがラジオとは違った視点で冷静に分析されているのもとても面白いので、「リトルトゥース」の方にもぜひ手に取っていただきたいです(僕がいうまでもないですが)。

まとめ

自分はネガティブサイドの人間だ、と思う方にはぜひ読んでいただきたいです。おそらく若林氏は、自分の二の轍を踏む人をできるだけ減らしたいと思っているはずです。

 

この本を読めば、ネガティブな人種が毎日を過ごしていく術が「だいたいわかる」と思います。

 

ナナメの夕暮れ

ナナメの夕暮れ